沖縄市サッカー場問題の調査についての翻訳第2弾です。
ウェイン・ドゥウェニチュック博士はカナダに拠点を置く環境科学者で、カナダのハットフィールド・コンサルティング会社の主任科学者として、ベトナムのホット・スポットを調査してきた専門家です。
そのドゥウェニチュック博士が、「日本政府と沖縄の人々の注意を促すために」という記事をジャパン・タイムスに寄せてくれています。
経験ある専門家が発する警告に耳を傾け、今後の対応を慎重に考える必要があります。

→Contaminant Monitoring / Agent Orange

サッカー場: 22のダイオキシンに汚染された残留物を含んだ30ガロン(114リットル)のドラム缶が沖縄市のこの土地で掘り出された。この土地は、以前は嘉手納米空軍基地の一部であったが、10年以上、サッカー場として使われていた。|ジョン・ミッチェル
AUG 26, 2013, The Japan Times
沖縄の米軍基地跡地における枯れ葉剤の存在を否定し科学を公然と無視:
サッカー場に埋設されていたドラム缶にベトナム戦争時代の枯れ葉剤があったことを証拠が示している、と科学者はいう
For the attention of the government of
Japan and the people of Okinawa:
日本政府と沖縄の人々の注意を促すために
ベトナムでベトナム戦争中に米軍によって用いられた枯れ葉剤の埋設に関する非難や否定が渦巻く中、正当な文脈では検討されてこなかったような反駁不能な事実が存在する。沖縄の嘉手納飛行場の一部であった土地に、このような米軍による埋設があったことを、雇われコンサルタントであり、軍事用枯れ葉剤の専門家であるとされているアルヴィン・ヤング博士と、米国国防総省が否定していることは、少なくとも不誠実であり、最悪、歴史的事実の露骨な隠蔽である。
15年以上、私はハットフィールド・コンサルタントの主任科学者として務め、エージェント・オレンジの南ベトナムの環境と人間への影響を調査してきた。我々の研究は、エージェント・オレンジから生じるダイオキシンが、生態系を経て、そして人間に入り込んでいくという、ダイオキシンの移動に関する理解の基礎を形成してきた。ベトナムにおける[訳注:エージェント・オレンジの被害の]救済方法の実施は、我々のエージェント・オレンジの研究に直接由来するものであり、ベトナムの旧米軍飛行場の一つであるダナンで進行中の研究もそれに含まれている。
愛媛大学は。旧嘉手納飛行場で発見された22本の30ガロンのドラム缶の液体残留物を分析した。2検体を除いて、エージェント・オレンジの2つの構成成分の1つである2,4,5-Tの製造過程で生じる特別な副産物である、有毒なTCDD(ダイオキシンの一種)が、含まれていた。この構成成分の、2,4,5-Tはドラム缶の大部分にあったが、低レベルで2,4,5-Tが検出されたことは、ドラム缶の中で長年かかって徐々に分解されたことをおそらく示唆している。
興味深いことに、エージェント・オレンジのもうひとつの構成成分である2,4-Dは22本のドラム缶のどれからも検出されておらず、液体残留物がエージェント・オレンジでないことも示唆されていた。沖縄防衛局は、これらのデータから、特に2,4-Dが検出されなかったことから、事実上、液体残留物が枯れ葉剤である可能性は「少ない(slim)」と結論づけている。この主張はあからさまな間違いであり、このドラム缶に枯れ葉剤の1つである、2,4,5-Tが存在していることを明確に示している客観的な分析データを全く無視している。わたしはこの「(可能性が)少ない」という言葉を「確実(certain)」という言葉に置き換えることを提案する。
「除草剤(herbicide)」と「枯れ葉剤(defoliant)」のような用語の用法に読者は混乱するべきではない—この2つは置き換え可能であり、データの解釈と特定の「戦時化学物質」が存在するか否かの問題を歪曲化しようとして用いられるべきではない。
ベトナムでの闘いにおいて、敵の軍隊から存在を覆い隠す森林や米穀を奪うことを目的とする植生除去のために用いられたこれらの化学物質は、様々な種類の化学物質混合物で構成されている。特定の化学物質の散布を同定できるようにするために、枯れ葉剤/除草剤のドラム缶は帯状に色—オレンジ、緑、ピンク、白等—をつけられていた。戦争が進行するにつれ、これらの化学物資により「ミステリアス」な雰囲気を漂わせるため、国際メディアにより、「エージェント」という言葉がドラム缶に施された色の接頭語としてつけられた。やがて、それらは「虹の枯れ葉剤(rainbow herbicides)」として知られるようになったのである。
ジャパンタイムスの一記事(「専門家「沖縄の投棄場はエージェント・オレンジの証拠となるかもしれない」2013年8月7日」で、ジョン・ミッチェルは「未だに国防総省は沖縄に軍事枯れ葉剤—エージェント・オレンジを含む—が貯蔵されていたことを否定している。2月には、そのような物質が沖縄にあったことを否定する29頁の報告書を出している」と書いている。
わたしは最後の数語を強調したい。ドラム缶から2,4,5-Tが発見された際に、そのように否定はどのような事実に基づくといえるのか?国防総省の主張を支持するために、ダウ・ケミカルの代表は、ドラム缶の[30ガロンという]量と標章からすると、同社が枯れ葉剤を船で輸送した際に使われたものとは一致しないと述べた。
わたしは、ダウ・ケミカルが1966年8月に1,866本の30ガロンの除草剤のドラム缶を船でサイゴンに向けて移送したことをはっきりと示している米国空軍の書類を所有している。結論として、国防総省とダウ・ケミカルはどちらも混乱しているか、あるいは両者の主張は、明らかに間違っている。
2,4,5-Tはエージェント・ピンクとエージェント・グリーン中の唯一の化学物質である。ゆえに、30ガロンのドラム缶に、2,4,5-TとTCDDがあったなら、そして、このドラム缶に製造時点で2-4-Dがないという過程で考えるのならば、これらのドラム缶にエージェント・ピンクと/かエージェント・グリーンが入っていた可能性は、わずかかもしれないが、ある。
2003年、『ネイチャー』誌で掲載されたジェアン・ステルマン博士の画期的な論文で、米軍の調達書類によると、少なくともエージェント・ピンク464,164リッター、エージェント・グリーン31,026リッターが、購入されたことが示されていると博士は述べている。しかし、ステルマンとその同僚達は、50,000リットルを少し超えたものが南ベトナムで散布されたことと、約15,000リットルが実験で用いられたことを記録できたにすぎない。嘉手納空軍基地から掘り出されたドラム缶は、廃棄のために沖縄に移送されたエージェント・ピンクと/かエージェント・グリーンの記録されなかった量の一部だったのか?
星条旗新聞の最近の記事(「専門家は語る:沖縄で発見された化学物質はエージェント・オレンジではなさそうだ」8月18日[i])では、ヤング博士の発言はこのように引用されている「30ガロンのドラム缶は脱脂した溶剤の可能性があり、『ストダード溶剤』と呼んでいるものだ」。ヤングはドラム缶から防衛省と沖縄市が検出した2,4,5-Tの存在を「研究所の間違い」と説明して一蹴しようとしている—なんて便利で単純で根拠のない説明だろうか。
私はヤング博士に、その人を見下したような意見が、この残留物の分析報告書を詳しく精査した結果からのものなのかどうか、責任のあるそして権威のある分析施設ならどこでも運営において遵守しなければならない、再現実験、比較対照、サンプル検出下限値、代替、
精度保証、精度管理やその他の研究プロトコールを包括したものかどうかを聞いてみたい。私は、そうではないと思う。
また、ヤング博士はその記事において「除草剤は厳しく監視/管理されており、いかなる沖縄への貯蔵や寄港も不必要な遅滞を伴うため、常にベトナムへ船で迅速に運ぶ積み荷として輸送されていた。」と述べている。それはベトナムで散布計画の実行中の話ならば、あてはまることだったかもしれない。しかし、もし、これらのTCDDとともに2,4,5-Tが含まれていたドラム缶が、ランチ・ハンド作戦(1962-71年に南ベトナムで実施された散布作戦)終了後、廃棄という目的に特定されて沖縄へ船で輸送されていたら、それは嘉手納空軍基地の化学物質の存在に全く異なった視点を示すことになる。
もし米空軍のために生産された除草剤のうち、供給過多分と使用不可能の分は、ベトナムでの使用にために送られてなかったとしたら、それゆえに、通常のように、軍事的にラベルとドラム缶の量を特定することが必ずしも必要ではなかったのだとしたら、これは、ダウ・ケミカルのラベルとドラム缶のサイズ(30ガロンか55ガロン)に多くの種類があることの説明にもなるかもしれない。不運にも、この説は疑いもなく—ひとつの説でしかない。
ドラム缶の内容物のラボの分析から得たダイオキシンのデータの発表の後、沖縄防衛局がドラム缶を溶解し、さらなる分析をさせないようにしたことに、私は非常に疑念を持っている[ii]。ドラム缶は、もともとは、10年以上も子供たちに使われたサッカー場の下に埋められていたものが発見されたのである。その上、サッカー場は2つの基地内の学校(ボブホープ小学校とアメリアエアーハート中学校)に隣接しているのである。
現実的に、歴史のこの時点においては、嘉手納のドラム缶の中身は、エージェント・オレンジ、エージェント・ピンク、エージェント・グリーンでも何でも、さほど重要ではない。避けられない事実は、沖縄の嘉手納空軍基地の一部の土地で、米軍が、戦時中の除草剤/枯れ葉剤である2,4,5-Tと、ダイオキシン類の中で最も有毒な成分で、そのような除草剤の製造に関係するTCDDが含まれるドラム缶にはいった「不明な」物質を廃棄した、ということだ。ジャパン・タイムスやアジア・太平洋ジャーナル:ジャパン・フォーカスで2011年には北谷、2012年には普天間の事例が報告されているように、沖縄で米軍が除草剤を廃棄しているという申し立てが他にもされてきた。
嘉手納空軍基地に隣接している地域に住む一般の住民や、その地域にレクリエーションの目的で出入りする住民は、地域の行政当局から、埋設されていた土地の地理的および化学的な分析と、適用できる早急な救済方法の実施を要請すべきである。さらに、地域の人々は、汚染物への曝露があったかもしれないことに起因する健康上の懸念について、情報を適切に与えられるべきである。
WAYNE DWERNYCHUK
Parksville, British Columbia
ウェイン・ドゥウェニチュック
パークスビル、ブリティッシュ・コロンビア
ウェイン・ドゥウェニチュックはカナダに拠点を置く環境科学者である。この問題へのコメントと永田町へのホットラインは500-700ワードでcommunity[at mark ]japantimes.co.jp まで。
"Expert: Chemicals found on Okinawa
likely not Agent Orange"
Stars and Stripes (Aug 18, 2013) .
[ii] 沖縄市の教育委員会に問い合わせたところによると、この記述は事実と異なっており、全面調査に入る前の時点では沖縄市がコンテナに検体採取済のドラム缶を保管している。コンテナは駐車場にある(2013.10.6記)
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(翻訳 Okinawa Outreach 河村雅美)
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